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2006年4月21日 (金)

第22回 四国こんぴら歌舞伎大芝居 第2部

久々の金丸座に心躍らせ、4月16日に東桟敷席で第2部を、翌17日に西桟敷席で第1部を観劇した。観た順に、まずは第2部から。

浮世柄比翼稲妻 (うきよづかひよくのいなづま)

 - 浅草鳥越山三浪宅の場

この小さな小屋に、あちこち雨漏りのする長屋はまことにふさわしく、だからこそ花魁道中がよく映える。こんな長屋に花魁道中が、というギャップが歌舞伎座よりもことさらに強く感じられて、初演当時、同じような長屋に住む人たちや、住んではいなくとも長屋が身近な存在だった人たちは、この長屋にもあんな花魁が来たら…と想像するだけでワクワクしたんじゃないだろうか。金丸座では憧れの江戸にタイムワープしたような気分で芝居を楽しめるので、歌舞伎座では普段考えもしないようなことに気づかされることがままある。

この小屋は、ほの暗い照明が女形を常以上に美しく見せる。それを差し引いても、亀治郎がとてもいい。時に演技過剰になったり前に出すぎたりすることがある人だが、顔のあざを気にする下女お国を慎ましやかに、山三への忠義と恋心をいじらしく演じる反面、傾城葛城では華やかさと芯の強い女性を描いて見せた。

三津五郎の山三は、騒ぎ立てる借金取りにも動じることなく、荒れた長屋にいながらまるでお殿様のように堂々としているのがおかしく、周囲のドタバタなどどこ吹く風、山三の周囲だけが別の空気に包まれているかのよう。雨漏りを避ける盥の視覚的なおかしさとあいまって、なんともチグハグなのが楽しい。

 お国を悩ませる悪心の父親、浮世又平には秀調。善人のイメージが強い人だけに若干弱い気もするけれど、さすがに手堅い。又平と組む遣り手のお爪を演じる右之助とともに、ベテランの味。

 又平とお国が声高に言い争い、毒酒にもがき苦しんで果てはともに死に絶えるまでの騒ぎが隣りの部屋にいる山三に聞こえないはずはないのだけれど、まぁ、そこは芝居ってことで。

 - 吉原仲之町の場

まず幕開きに舞台の華やかさに客席がわき、天井のすのこから客席全体に、桜の花びらが降るわ降るわ。雰囲気が十分に高まったところで、舞台上の両花道から、西に三津五郎の山三、東に海老蔵の不破が登場すると、たちまちの大歓声。東の桟敷席だったから目の前を海老蔵が通るのに、惜しいかな、深編笠で顔が見えない~! 

山三の衣裳の水浅黄が三津五郎には特によく似合う (他には梅玉。この2人、似合う役も割とよく似ているような…)。対して不破は黒地に雲の稲妻とド派手で、この好対象も歌舞伎美のひとつ。二人が深編笠を取った瞬間の歓声がすごかった。客席のボルテージが一気に上がる。ところが、海老蔵の台詞がいただけない。ところどころ何を言ってるのか分からないぐらいにワヤワヤで、姿がいいだけに残念でならない。でも眼力(ガンリキではなくメヂカラ)の強さは圧倒的で、もうそれだけでいいや、と思わせてしまうところがなんとも。

茶屋女房姿で2人をとめるのも亀治郎。ここでも控えめで好ましい。ちなみに、亀治郎が演じた傾城の名前 「葛城」 は、ワープロでも 「かつらぎ」 で出るし日常的にも舞台でもそう発音されているけれど、正しくは 「かずらき」 で、能では本式にそう読むそうだ。ひとくちメモ。

隣りの升席に外国人の若い男性がいて、専属の通訳をつれているのだけれど、通訳の男性もプロではないのかあまり慣れていない様子で、しかも歌舞伎を観るのは初めてとのこと。問われるままにあれやこれやと説明をしたのだけれど、吉原で太夫を張る花魁と女郎や夜鷹のような存在の違いを通訳の人もよく分かっていないのに、外国人の彼の方が詳しかった。日本が大好きでいろいろ勉強しているらしい。鞘当のあと、「あの2人はこれからどうなるのか」 と質問された。そうだよね。歌舞伎は完結しないで終わっちゃうから。

色彩間苅豆 (いろもようちょっとかりまめ) かさね

「色彩」 で 「いろもよう」 はともかく、「間」 ひと文字で 「ちょっと」 と読ませるところがすごい、と観るたびに思う。

海老蔵の与右衛門は、まさに目も覚めんばかりのイイ男。ああ、こんな男になら殺されてもいい、と思ってしまうぐらいの凄みがある。ただ、ここでも台詞がまったくダメで、いつぞやの光源氏ほどではないものの、やたらに変な作りこみをしていて不自然極まりない。惜しいなぁ。殺し場は迫力満点で、ここでも彼の眼力が生きて、思わずため息が出るほどなのに、そのままで終わらせてくれないのが最近の海老蔵。かさねの怨霊に連理引で引き戻された後、一瞬、引き戻す力が消えると途端にスタスタと、済ました顔で、ロボットみたいな動きで歩き出すものだから、そのたびに客席から笑いが起こる。まるでギャグ。こんな連理引、観たことな~い! それでも、連理引の間、何度も桟敷席のすぐ目の前を行ったり来たりするものだから、客席は大いにわいて、結局は台詞の難さえ許せてしまう。美貌の強みだねぇ。

亀治郎はこの役もヒットで、一気に株を上げた。

でもこの芝居、ストーリーとしては複雑なので、この場だけを観ると何がなんだか分からない。外国人の彼はもちろん通訳さんも???の状態だったので、川を流れてきたしゃれこうべは与右衛門が殺したかさねの父親のものだと説明して、ようやく分かってもらえた。かさねの着物のモミジの柄は血の見立てだということも説明してあげればよかったな。

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