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2006年10月26日 (木)

十月歌舞伎座 昼の部

芸術祭十月大歌舞伎

今月20日に中村源左衛門さん逝去。享年72。支度の早い方で、夜の部の幕切れまで舞台に出ていらしたはずなのに帰りの日比谷線でご一緒になったことも何度か。真っ赤なスタジャンとか、ピンクのシャツにベージュのチノパンとか、いつも若々しいお姿が印象的だった。つい助五郎さんと言ってしまう。新しいお名前がまだピンと来ないうちに逝ってしまうなんて。人一倍お元気な方だと思っていたので今でも信じられない。合掌…。

■ 芦屋道満大内鑑 葛の葉

魁春初役の葛の葉。赤姫姿と石持ちの女房姿の二通りを見せるので、若い頃は赤姫ばかりの時期もあったけれど、いつのまにかしっとりとした女房姿の方が似合う役者さんになったんだなぁ、としみじみと感じ入ってしまった。情愛の深さが自然ににじみ出てくるのがいい。狐の姿もとても狐らしいというか、どこか凛としていて、形がとても美しかった。

保名を勤める門之助も初役。涼しげな風姿で、おっとりとしたところもあるのがこの役によく合っている。やわらかみのある二枚目。

庄司夫婦は錦吾と歌江で、いずれも手堅い。芝居の決まりごとなのか老けとして演じているけれど、娘の年齢から考えるとまだ40代か、せいぜい50代の初めではないのかしらん。

保名が童子の母を追っていき添い遂げるとすれば、許婚を狐にとられてしまった葛の葉姫は…。6年も待ち続けた人がすべてを承知の上で自分より狐を選ぶなんて、女性としてはかなりショックだろうなぁ。

幕切れに狐の引っ込みがつく。やっぱりこれがないと。最初から鼻から下だけ狐の面をつけるやり方もあるけれど、今回は普通に女房の姿で出て、源九郎狐のような真っ白い狐の姿に変わる手法。手ろうそくの薄明かりに白い毛が映えて美しかった。派手ではないけれど、しみじみと満足。

■ 寿曾我対面

團十郎の工藤に菊之助 ・ 海老蔵の十郎五郎という極上のご馳走のような一幕。たまたま最前列のド真ん中だったので、團十郎が高座に上がる前に挨拶する場面も、いきり立つ五郎を十郎が制止する場面も、まさに真ん前の至近距離だったのでドキドキしてしまった。五郎が十郎に制止され、「分かってるよ」 とでも言いたげな表情をする。その時の海老蔵の目の動きがちょっと流し目みたいで、なんだか不思議な印象だった。工藤への恨みを荒事で見せる場面の力強さは圧倒的。真紅の衣裳が若い二人によく映える。

キレイどころの大磯の虎と化粧坂少将には田之助と萬次郎。円熟の味わい。権十郎の朝比奈は持ち役のひとつになりつつあるけれど、ちょっと堅い。力が入りすぎちゃうのかなぁ。小藤太に市蔵、八幡三郎は男女蔵で、顎を引いてどっかりと座っている時の男女蔵が左團次さんと同じ表情! 決して顔がそっくりなわけじゃないんだけど、雰囲気がとても似てきた。

梶原父子に松之助と新蔵というのは大抜擢? この一幕の眼目が役者の顔ぞろえにあることを考えるとちょっと弱い気もする。あと、並び大名のうち筆頭の寿鴻だけが不自然に白い顔で、奇異に感じた。… なんだかアラ捜しみたいになっちゃったけど、こういうストーリーどうこうでなく、しかもよく出る演目って、ついつい雑念が…。

■ 一谷嫩軍記 熊谷陣屋

この幕はどうしてこうよく出るのだろう。上演記録を見ても、歌舞伎座でかからない年はほとんどない。何度見ても、どうしても好きになれないんだけどなぁ。熊谷をやるのが誰であっても。

相模は芝翫。夫の帰りを待ちながら、ほうっ、とため息をつく。どの相模もここでため息をついただろうか。なんだか新鮮だったのだけれど、見落としていただけかもしれない。高麗蔵の軍次と魁春の藤の方には、すっかり持役となった安定感がある。

弥陀六は段四郎。くっきりと刻み込まれた皺に違和感がなく、年老いてもなお武士の気概を失っていない力強さが目にあって、まだ2回目とは思えない。すっかり手に入った役のようだった。老け役がどんどん少なくなっていく中、この人もますます役割が重くなっていく。

幸四郎の熊谷。この芝居で一番気になるのは最後の 「夢だ…」 の台詞で、吉右衛門は感極まって思わず口をついて出る、というような抑えた言い方をしていたと思うのだけれど、幸四郎の今回の熊谷はこの部分がほとんど絶叫に近い大音量。それはちょっと違うんじゃないかと思った。確かに見せ場には違いないけれど、違和感の方が強かった。

■ お 祭 り

文句なしのいい男! こんな鳶頭が街中を歩いていたら、すれ違っただけでも惚れちゃいそう。ただスッキリしすぎている感もあって、酔ってる雰囲気は薄かったかな。先代勘三郎なんかはビデオで見てもお酒の匂いがぷ~んと漂ってきそうだったけど。

新七さんはじめ若い者たちの動きもキビキビと気持ちよく、華やかな幕切れ。

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