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2007年1月19日 (金)

新春浅草歌舞伎

第一部・第二部を通しで観てきた。
『義経千本桜』 より、第一部は  「すし屋」、第二部は 「渡海屋」 と 「大物浦」、第一部・第二部共通で 『身替座禅』 という演目なので、1日分をまとめて評することにしたい。

まずは 『義経千本桜』 から。同じ物語の中から昼夜で別の話を出すというやり方は、出演者に応じて若い客層が多い浅草には向いているし、気が利いていると思う。年始ご挨拶は第一部が勘太郎、第二部が愛之助だったが、演目が共通していると説明もしやすいだろう。

「すし屋」 では、愛之助の権太に芝のぶのお里、七之助の維盛に男女蔵の弥左衛門。愛之助は、器用さが時にあざとく見えて、薄っぺらになりがちなのが残念だったが、性根を入れ替えてからは骨太さも出て、風姿の良さが際立った。芝のぶのお里は、なによりも可愛らしい個性が生きて、ほほえましい。七之助は線の細さが優男らしさにつながって、弥左衛門と二人になって正座に直る場面で、がらりと様子が変わって武士らしく … はならなかったのと、妻と別にお里とも、という色男ぶりが見えない。愛之助、芝のぶ、七之助と3人とも声がいいので、耳に心地よい舞台だった。男女蔵もこの一座だと老役になってしまうのねぇ。ちょっと気の毒。それにしてもお父さんに似てきたなぁ。時々ビックリするほど似ている。梶原平三景時は獅童。この一座ではこの人しかいないと納得させるだけのものはある。あくまでこの一座なら、だけども。そのほか、嶋之亟のお米、亀鶴の若葉の内侍、國矢の小せん。

「渡海屋」 「大物浦」 を通して、獅童の知盛、七之助の典侍の局、勘太郎の義経、男女蔵の弁慶、亀鶴の相模五郎、愛之助の入江丹蔵。まず獅童の知盛は、銀平の拵えもなかなかにスッキリとしたいい男。ただちょっとカッコつけすぎかな。二枚目であろうとしすぎたかもしれない。知盛になってからはベリベリとした勇壮さがあり、碇をかついでのラストも立派だった。とりあえず及第点。七之助は、ここでも声のよさが光って、安徳帝を抱きかかえて今まさに海に飛び込もうとする場面での朗々とした台詞が凛としていて素晴らしかった。船宿の女房に身をやつしている間は、もうちょっと柔らかさがほしいかな。客商売にはまったく向かない女性に見えた。亀鶴と愛之助のコンビは息も合い、魚尽くしの台詞は大ウケだった。ただ、亀鶴がわざと野暮ったい衣裳で情けない侍を演じているのに、愛之助の方はその家来のくせにやけにスッキリしたいでたちだったのがアンバランスに感じた。勘太郎の義経は気品もあり情も見せて立派。弁慶姿の男女蔵がまたパパに似てるんだぁ。

出演者が全員若いので、歴史物の重みはあまり感じられず、ハツラツとしすぎている感もあるけれど、そこはまぁ、浅草ならではの味だから。

『身替座禅』 は、第一部・第二部ともに勘太郎が山蔭右京を演じる。なぜ??? 第一部は獅童の玉の井に七之助の太郎冠者、第二部は愛之助の玉の井に亀鶴の太郎冠者と役を替えているのに、主役だけ替えないなんて、ちょっともったいない。勘太郎の右京は若いながらも大名らしい気品があり、愛嬌もたっぷりながらやりすぎず、実に結構で何度でも観たいと思うぐらいではあったけれど、でもやっぱり、別の人でも観てみたい。それが浅草の楽しさでもあるのに。上置き扱いの男女蔵は別としても、亀鶴の役が第一部・第二部ともに他の人より軽すぎるぐらいなのだから、第二部では亀鶴の右京に勘太郎の太郎冠者でも良かったんじゃないか。亀鶴は稚魚の会・歌舞伎会の研修公演では大きな役もやっていたから個人的にはすごく買っているひとりで、一般的にはまだそれほど知名度は高くないのかもしれないけれど、そこは浅草、ぜひもっと重く用いてあげてほしかった。左團次さん贔屓の私としては、男女蔵さんにもぜひ本興行でもっと大きな役をやってほしいのだけれど…。

玉の井は、獅童も愛之助も、滑稽な化粧をせずごく普通のこしらえで、それぞれになかなか可愛らしい。獅童の女形というとどうしても強烈だった牛娘を思い出してしまうのだけれど、あの時のようなとんでもないことはしていないのに、やたらと客席がわく。特に若い女性の笑い声が目立った。私生活でゴタゴタしてはいても人気の方はまずまずらしい。愛之助も、こちらの役ではあざとさはなく、やりすぎないのが良かった。どちらかというと、獅童とは対照的にオバサマ層にウケていたみたい。

太郎冠者は、七之助と亀鶴の間でハッキリとカラーが違って面白かった。もし太郎冠者のほかにも朋輩が数人いるとしたら、七之助はその中でも目端が利いて要領よく立ち回るエリートタイプ、亀鶴の方は、生真面目でそれほど目立たないんだけれど殿様にはその真価をきちんと評価されている堅実タイプ。殿様が勘太郎だから、息が合っているのはやっぱり七之助の方なのだけれど、勘太郎と七之助って声のトーンが高いところまで似ているから、ポンポンとスピーディーに台詞のやりとりが続く場面ではちょっとキンキンした印象になる。その同じ場面が亀鶴だと、声のトーンも違うし台詞と台詞の間合いも若干長めになって聴きやすい。こんなふうに比べることができるのも浅草の楽しさかな。

千枝小枝は共通して國久と蝶紫。控えめで美しい。

最後にどうしても特筆しておきたいことがある。共通して後見を勤めた國矢のたたずまいが実に端正で、ため息が出ちゃうほどだった!

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