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2007年1月24日 (水)

歌舞伎座一月 昼の部

寿初春大歌舞伎

■ 松 竹 梅


歌舞伎座に毎月通うようになって20年近く経つと、演目が何であれ気にせずチケットを取ってしまうし、当日も事前に演目を確認したりはしないので、客席についてから 「さて、今日は何を観るんだっけ」 ということも少なくない。その方が、幕が上がってからどのくらいで何の芝居だか分かるかな、と自分を試す楽しみもあったりする。チラシや歌舞伎座のメルマガで一応は目にしているはずなのだけれど、襲名その他の特別な興行でなければまず覚えていない。そんなわけで、今日も何が始まるのか分からないまま開演を待った。

なんとも華やかな幕開きに、そういえばまだ 「正月」 だったと気付かされる。闕腋袍 (けってきほう) という難しい名前の衣裳をつけた武官姿の梅玉と、おなじみの舎人の衣裳の橋之助。梅玉には貴族の衣裳がよく似合う。端正。橋之助の方は、舎人の衣裳だと長い手足が余計に強調されて、ちょっとアンバランスな印象。最後は花道に入るのだけれど、主人の後を舎人が追っていく形だと後から入る橋之助の方に目が集まりすぎるので、せっかく背景が華やかなのだから、絵面に決まって終わる方がいいような気がした。

背景が松から竹に変わり、てことは梅が続くのね、と分かる。竹とくれば雀。信二郎、高麗蔵、松江の三人が雀で、奴の歌昇とからむ。四人とも厳しい表情のままだったせいか、「戯れ踊る」 というよりは雀対奴の闘いみたいでちょっと怖い。

梅はこれまた華やかに、女形が三人そろい、曾我物語の世界を借りて、魁春が工藤の名代であることは台詞から分かったので、残る芝雀と孝太郎は大磯の虎と化粧坂の少将。当然ながら魁春の衣裳だけが他の二人とはまったく違い、武家らしくありつつ負けず劣らず豪華。松竹梅がそろって、初春にふさわしくおめでたい幕。

幕間にようやく筋書を開き、梅玉は在原業平で、魁春は工藤の妻だったことを初めて知る。なるほど~。分からなかったのは当然で、まったく新作の踊りだった。作詞は川口松太郎だそうな。ふむふむ。

■ 俊  寛

「またこの芝居?」 と思ったのも無理はなく、12月の南座で観たばかり。その時は仁左衛門の俊寛で、遠ざかる船を追って花道に出て行く場面で、俊寛がいきなりスッポンにはまり、胸ぐらいまで水につかった状態でなお手を振り続けるという、鬼界ヶ島周辺の地形まで変えてしまう大胆な演出だった。今回の吉右衛門俊寛は、浅瀬で波に押し戻される従来どおりのやり方で、見慣れているせいか、この方がおさまりがいい。

意外にも富十郎の丹左衛門は初役だという。筋書にはっきりそう書いてあるのになんだか信じられなくて、上演記録で確認してあらためてビックリ。この人が声をはるとやたらと目立ってしまうけれど、あくまで吉右衛門を立てる形で万事控えめに演じていた。

瀬尾は段四郎。一時はかなりやせていたけれど、だいぶ戻ってきたので貫禄十分。もともと目に力のある人だから、敵役も十分にいける。福助の千鳥は、船に乗せてもらえないと分かって嘆く場面で、うっかりなのか、勘三郎とのコメディっぽい芝居でよくやるような低い声と口調になったので、客席から笑いが起こってしまった。俊寛が赦免状に自分の名前がないことで苦悩する場面では、舞台片隅のほとんど目に入らないところにいながら、気を抜かず、ずっと心配そうにハラハラしながら見守っていてよかっただけに残念。東蔵の康頼、歌昇の成経。

幕切れ、岩の上での俊寛の表情に興味がある。勘三郎だったか、うっすら笑いを浮かべた人もあれば、遠い一点をじっと見つめる人もいる。吉右衛門のやり方も常に同じかどうか分からないのだけれど、「寂寞」 という言葉がピッタリくるようないい表情をしていたのに、静けさで終わるべきこの場面で、「大当たり!」 と声をかける輩が…。感じ方は人それぞれだろうけれど、やめてほしかった。

最後になったが、幕開けにプ~ンと海草の匂いがした。吉右衛門が海草の束を手に現れると、いっそう匂いが強くなる。今までもこんな匂いしたかなぁ? ひょっとして、俊寛の小屋の屋根に使われていた海草も本物?

■ 勧 進 帳

これも 「またぁ?」 と思ってしまう演目なわけで、ましてや幸四郎が昨年十一月に九百回目を演じたばかりとなれば、単に記録を伸ばしたいだけなんじゃ? といううがった見方さえしてしまいたくなるのは、あまりに意地が悪いだろうか。でも今日の幸四郎弁慶はちょっと意外だった。大酒を飲み干すあたりはなごやかになる場面だが、それ以外でなぜか笑顔を見せる。たとえば最後、義経一行が無事に花道を入っていったことを確認したところで、うっすらとではなく、はっきりと満足げな笑みをもらす。他にもどこだったか、意外なところで笑ったような…。自分が六法で入っていく直前だったかしらん。そこでも何か違和感を感じたのは、笑顔のせいだったかどうか、記憶がいまいちはっきりしない 。 (今日観てきたばかりなのに!) とにかくなんだか不思議な弁慶だった。

義経は芝翫。なにげに久しぶりだと思ったら、その前は平成11年まで遡る。真紅の半襟がやたらと目立った。さすがの品格。

高麗蔵の亀井、松江の片岡、錦吾の常陸坊と並んで宗之助の駿河。澤村姓が少なくなっている今、宗之助にもっと大きな名前を継がせる意向なのかなぁ、とふと思ったり。

■ 六歌仙容彩 喜撰

勘三郎の喜撰法師に玉三郎のお梶。この幕だけ録画されていた。勘三郎はいたって真面目に踊っていたと思うのだけれど、なぜだか客席は大うけで、なにげない仕草のひとつひとつに笑いが起こる。二人の仲の良さが自然に出ていて、観ていて確かに楽しかったけれど、あんなに笑うような内容ではなかったと思うなぁ。弥十郎を筆頭に所化がたくさん。にぎやかな幕切れ。

終わってみれば、最後のこの幕が一番面白かったかな。

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コメント

昨日はどうもありがとうございました。
あの屋根の昆布、本物だそうです。
http://blog.goo.ne.jp/takasagoumeyuki/e/cfbad2cf6b58d43a0a710deadc71e51e
最前列だと香るかな、と聞いてみたかったのでわかってなるほど!です。^^

投稿: urasimaru | 2007年1月24日 (水) 10時20分

おおっ! やっぱりそうだったのですね。ありがとうございます!
梅之さんのブログはよく読ませて頂いているのに
このところ忙しくてサボっておりました。
ちゃんと読まねば~。

投稿: まる | 2007年1月24日 (水) 11時10分

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